記憶力はたんに暗記することではありません。物事を深く考えるための土台になるもので、訓練によって上達も可能です。記憶力アップのコツを、「記憶力グランドマスター」の称号を持つ池田義博さんに伺いました。AERA with Kids春号では、記憶力向上に欠かせない具体的なトレーニング方法も紹介しています。

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●今、記憶力に注目が集まるわけ

「記憶力を磨くのは、脳を育てる一番効率のいい方法なんです」と教えてくれたのは、脳力デザイナーの池田義博さん。記憶力が高まると物覚えが良くなるだけでなく、覚えた知識を上手に活用する力が同時につくといいます。コツは脳が記憶するしくみを利用すること。脳は、記憶をつかさどる海馬と感情をつかさどる扁桃体が隣接しているため、感情が強く動いたときほど脳は記憶を強化、定着することがわかっています。つまり対象物に関してイメージを描いたり、エピソードつきで頭に刻み込んだりすれば、覚えやすく、忘れにくく、活用しやすくなるのです。イメージ化は訓練すれば誰もが身につけることができるそう。

「小学生は九九のような丸暗記を経て、納得しながら記憶し、それをもとに思考する形へと移行する時期です。ここで感受性を磨いておくことが大切。イメージをふくらませ、体を動かして楽しむことで、脳が活性化されて、記憶力はグンと向上しますよ」

●記憶力アップのコツ1 睡眠の質は寝始め90分で決まる

 記憶を長期に残すためには睡眠が必須。脳は、その日に入ってきた数々の情報を睡眠中に整理して取捨選択し、必要なもののみ脳に定着させます。徹夜で詰め込んだ内容はすぐに忘れてしまうのも、このメカニズムのせい。とくに寝始めの90分に深く眠ると質の良い睡眠が得られます。脳を興奮させてしまうゲームなどは、寝る直前は控えましょう。

●記憶力アップのコツ2 姿勢が悪いと、脳への負担大!

 姿勢の良しあしはしつけのひとつととらえがちですが、実は脳にも影響します。姿勢が悪いとは、体が曲がったり傾いたりしてゆがんだ状態のこと。脳は多くの情報を目から取り入れるので、脳の空間認識能力にもゆがみが生じてしまうのです。すると脳は常に補正作業を強いられるため、せっかくの潜在能力を十分に発揮できなくなるのです。

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篠原麻子
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