令和を代表する棋士になるであろう藤井聡太二冠(18)の表情には、まだあどけなさが残る。底しれぬ魅力に、みなが刮目する (c)朝日新聞社
令和を代表する棋士になるであろう藤井聡太二冠(18)の表情には、まだあどけなさが残る。底しれぬ魅力に、みなが刮目する (c)朝日新聞社
AERA 2020年10月5日号より
AERA 2020年10月5日号より

 一人の天才棋士が、将棋の見方を変えた。黙って盤を見つめ、言葉を交わすことのない棋士の「対話」に、私たちは魅せられる。AERA2020年10月5日号では、将棋と棋士の思考力について特集。その中からここではトッププロになる条件などを紹介する。

【初タイトルに最年少で「挑戦」したランキングはこちら】

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 空前の将棋ブームである。

 18歳になったばかりの天才少年・藤井聡太二冠(王位、棋聖)が牽引し、脇を固める実力者たちも個性が際立つスターが揃っている。雑誌やウェブマガジンで次々に特集が組まれ、ややもするとマニアックだった棋界と社会との距離が、確実に近づいている。

「将棋の奥深さを感じた」

 王位のタイトルを獲得し、八段昇段を決めた翌日の8月21日、会見でそう語った藤井二冠。謙虚でありながら「まだまだ考えが足りないと思うところもあった」と自分自身を常に成長させる姿勢に、ファンならずとも「将棋」に魅せられる。

■将棋文化の裾野広がる

 だが、今の将棋ブームは降って湧いたものではない。地道な活動が結実したともいえる。

 プロ棋士が所属し、タイトル戦などの大会や各種イベント運営を手がける日本将棋連盟が、「学校教育課」を立ち上げたのは2006年。東京都教育委員も務めた米長邦雄会長(当時)の肝いりで、伝統文化としての将棋を次世代に継承する目的で、学校教育への将棋導入推進事業を始めた。

 小学校、中学校、高校を対象に申し込みに基づいてプロ棋士や女流棋士、指導棋士を派遣し、1校あたり年10回を上限に総合学習で将棋の歴史を学んだり、放課後やサタデースクール、部活動やクラブ活動など幅広い取り組みに対応してきた。申し込みは07年度の43校から順調に増え、16年度にいったん113校に落ち込んだものの17年度には170校に回復、昨年度も176校を数えた。

「派遣先は将棋会館のある東京、大阪を中心にした関東と近畿圏が主になりますが、これとは別にアマチュアの普及指導員が全国で千人以上フル活動していて、統計に表れない普及が浸透しています。小中学校の3人1組の団体戦も地方予選からの参加者が増えています」(将棋連盟普及課)

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