国内外のクラスター分析からは逆説的に、3密を避ける、換気をよくする、症状がある時は外出を控える、無症状でも症状が出る前からでも他の人に感染させる可能性があるので公共の場では人にうつさないようマスク着用を心がける、といった感染予防の基本の重要性が浮かび上がってくる。

■2割の感染者から拡大

 同時に、感染者の国内外のクラスター分析から、全員が感染を広めているわけではなく、「スーパースプレッダー」と呼ばれる一部の感染者が複数人に感染させていることがわかってきた。

 厚生労働省クラスター対策班が2月末までの11クラスターと散発的な感染者110人を分析したところ、8割近い感染者は誰にも感染させていなかった。一方で、7人の感染者は3人以上に感染させていた。中には12人に感染させた人もいた。

 海外でも同様の分析があがっている。香港大学などの研究グループが香港で起きた135のクラスターの、感染者1038人の感染源や接触歴などを解析したところ、香港外から持ちこまれた感染を除き、香港内の感染の8割は、2割の感染者からの感染で起きたと考えられるという。感染者1人から6~8人に感染が広がったようなケースが5~7件あった。11人に感染させていた人もいた。

 さらに、イスラエルの研究グループが国内の感染者212人から分離した新型コロナウイルスのゲノムを解析して比較したところ、1~10%の感染者が、2次感染の80%を起こしていたことがわかったという。

 スーパースプレッダーについて、厚労省クラスター対策班の押谷仁・東北大学教授はこう説明する。

「まだメカニズムは不明だが、体内、とくにのどなどの上気道で産生されるウイルス量が多い人がいる。そういう人が多くの人に感染させる。ただし、大勢に感染させるのは、感染の発生しやすい状況にいる時だけです。他の人と密に接触しなければ、感染は起こりません」

(ライター・大岩ゆり)

AERA 2020年9月28日号