国指定重要文化財である東京駅丸の内駅舎内にあり、駅開業翌年の1915年に誕生。定宿にしていた松本清張や内田百※(※は門構えに月)ら文豪にまつわるモチーフを随所にちりばめて、2012年に改築した。

 メゾネットなど駅舎の形状を生かした部屋のタイプが特徴的で、中でもせきねさんのおすすめは「ドームサイド」の一室。駅舎にある南北の吹き抜けドームに沿って配置され、窓の眼下に人が行きかう改札口前が見える。せきねさんは言う。

「夜中に目が覚めて、ふとカーテンをあけたとき、薄暗く森閑とした東京駅の構内を見下ろして、非日常の光景にドキッとしました。ここでしか経験できない唯一無二の場所です」

 8月から都内在住者限定プランとして客室半額キャンペーンを始めたところ、3日間で550室以上の予約が入った。往年のファンが多い朝食ビュッフェも感染対策を見直して復活。シェフが目の前で調理する料理を増やしたり、炊き立ての土鍋ご飯をテーブルごとにサーブしたり、新しいスタイルが好評だ。

 マーケティング部の濱純子さんによれば、都の飲食店の営業時間短縮によってホテルの利用者も朝型のライフスタイルに切り替わっている人が多いと感じるという。「太陽が昇りきらないうちに、人の少ない駅舎前の広場や緑の多い丸の内仲通りを歩いて、1日の始まりを過ごしてほしい」と話す。

■冷蔵庫にはシャンパン

 最後は、8月5日に外苑前の旧ベルコモンズの跡地にオープンした「THE AOYAMA GRAND HOTEL」。本来五輪の年だった今年は東京観光客を見据えたホテルが次々とオープンしており、SNSで話題のホテルは外国人観光客の少ない今が穴場かもしれない。

「ミッドセンチュリー調の家具は居心地よい快適さがあり、まさに暮らすように泊まりたいライフスタイル型ホテル。青山の地域にホテルは珍しく、この土地ならではの洗練さと非日常感があります」(せきねさん)

 手がけたのは、神戸や福岡などで地域の特性を生かしたホテルを運営する「Plan・Do・See」。客室のイメージは、70~80年代に青山で音楽やファッションなどカルチャーを発信していた人が暮らしていたヴィンテージマンションだという。

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