95%が在宅のため平日の日中もほとんど人が通らないヤフーの本社エントランス。在宅化で仕事の効率も向上したという/東京都千代田区(撮影/写真部・張溢文)
95%が在宅のため平日の日中もほとんど人が通らないヤフーの本社エントランス。在宅化で仕事の効率も向上したという/東京都千代田区(撮影/写真部・張溢文)
ヤフーで働き方改革を進める湯川高康執行役員。同社の新制度がコロナ後の「ニューノーマル」になるかもしれない(写真:ヤフー提供)
ヤフーで働き方改革を進める湯川高康執行役員。同社の新制度がコロナ後の「ニューノーマル」になるかもしれない(写真:ヤフー提供)

 コロナ後のオフィスが、働き方がどうなるのかを、ヤフーの新制度が示した。好きな土地に住み、好きな時間に好きな場所で働く。AERA 2020年9月14日号で、実現できた背景を幹部が語る。

【写真】ヤフーで働き方改革を進める湯川高康執行役員

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 ヤフーが、働き方の「自由化」を加速させている。従業員が始業と終業のタイミングを自ら決められるフレックスタイムを導入している企業でも、1日の中でオフィスにいるよう推奨する「コアタイム」という時間帯を設けていることが多いが、ヤフーは10月から、「1カ月間の労働時間さえ満たせば、早朝・深夜以外なら何時から何時の間で働いてもOK」「リモートワークは回数無制限」という新制度に踏み切る。

 全国の正社員、契約社員、嘱託社員計7100人余が対象だ。まさに「いつでもどこでも、自分の好きなように働ける」という、日本企業ではかなり珍しい勤務体系になる。ヤフーの働き方改革を進めてきた執行役員の湯川高康さんは、アエラのインタビューにこう打ち明けた。

「オフィスに通勤して仕事をするものだと、私たちは長年、何の疑いも持っていませんでした。しかし、これまで当たり前だと思っていたものが、そうではないことに今回気づかされたのは大きな衝撃でした」

■9割が効率維持か向上

 ヤフーは2014年からオフィス以外の好きな場所で働ける「どこでもオフィス」という制度を始めるなど、コロナ禍以前からリモートワークを積極的に採り入れてきた。背景にあったのは、当時進めていた企業としての大転換だ。

 ヤフーはインターネット上の広告が大きな収益源。だが当時、ネットの主役はヤフーが得意としていたパソコンからスマートフォンへと急激に移行し、ヤフーの収益にも陰りが見え始めていた。そこで当時の宮坂学社長が「スマートフォンファースト」という大方針を打ち出し、業態をスマホ中心へと大きく転換させた。

 パソコンに縛られず、スマホやタブレットを手にオフィスを飛び出す──。それは当時のヤフーにとって自然な流れだった。月2日でスタートした「どこでもオフィス」は17年7月から月5日に拡大。そこにコロナ禍が起こり、2月から一気にリモートワークの制限を解除した。

 湯川さんは「今のところ、全面リモートに切り替えてネガティブな要素はない、というのが実感です」と話す。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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