例えば、「せいぜい一言でお願いします」「確認は当然お願いします」の「せいぜい」「当然」という副詞には、上から目線や優越感がにじみ出る。

 一方で「わざわざありがとうございます」「せっかくのお誘いなのに申し訳ありません」「ぜひご一緒したい」といった副詞は、相手に対する配慮を伝えられる。「やっぱり」「確かに」「もちろん」など、副詞にはいろいろあるが、どんな文脈でどんな副詞を選ぶか、書き手の力量が試される。

「文書を通じて情報だけでなく、人柄や内面もやり取りしているという意識を持つことが大切です」(石黒教授)

 チャットで無用な軋轢を生まないためには、オンライン会議と同様に、社内ルールを定めておくのが望ましい。ビジネス版のLINE「LINE WORKS(ラインワークス)」を提供するワークスモバイルジャパンが行った調査によれば、50代の上司世代はチャットでは挨拶・署名は不要と考えている割合が高く、30代よりフランクで効率的なコミュニケーションに寛容なことがわかる。一方、上司が思う以上に部下は気を遣っている。

「チャットによる業務効率の向上を目指すには、挨拶不要、『了解しました』不要など、社内のルールを明文化するのがよいでしょう」(ワークスモバイルジャパン執行役員の萩原雅裕さん)

(編集部・高橋有紀)

AERA 2020年9月7日号より抜粋