新型コロナウイルスによる肺炎が流行した武漢で、作家の方方氏が発表し続けた日記が世界の注目を集めた。温和で、中国共産党の権威に挑むものではまったくなかったが、流行を食い止められなかったことについて責任を追及する考えを示しただけで、中国国内で2カ月にわたり数千万のネットユーザーの袋叩きに遭い、脅迫を受けた。この「私はウイルス――武漢ロックダウン日記」は、方方氏と同じく武漢で暮らす一般市民の男性「阿坡(A.PO)」が、中国共産党を批判する反省の書として記したものだ。「一人の健全な精神を持つ中国人」として、世界に向けてお詫びの気持ちを示したいという。阿坡は、この新型コロナウイルスの感染拡大の責任が誰にあるのか、はっきりさせなければいけない、と思い立つ。
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■2020年2月11日 新型コロナ流行を時系列で振り返る(6)
中国人は忘れっぽい。私を含めて。2003年のSARSによる犠牲者は何人だったか? ことの経緯はとっくに曖昧だ。2008年の四川大地震(ぶん川大地震/ぶんはさんずいに文)の犠牲者は? 定かでない。遠い上に時間的にもはるか昔だ。今回武漢で起きた新型コロナウイルスによる肺炎の流行も、人々がまだ危機にあるとはいえ、理性的に分析し今日2月11日現在確認できる情報を加味すれば最長10日から15日で、2月末ごろターニングポイントを迎えそうだと分かる。
中国人の特徴からして、ショックからおおらかな日常への立ち直りも早い。だいたい2カ月もかかることはないはずだ。
その後、このような大きな、世を震撼させた出来事であるからには、必ずや責任追及が行われるだろう。しかし、どのように責任を問うか、誰に責任を負わせるかは、もちろん最も直接的に被害を受けた私たちが決めることではない。みんなはそれを不思議とは思わない。
ただ、私だけは二度とその「みんな」の中に含まれることはないつもりだ。
過去3週間、大人口を抱える大きな図体の武漢にストップキーが押された。そう、今はほとんど中国全体がストップキーを押された状態だ。そんな中、李文亮医師は若くして亡くなった。彼は私と同様の普通の人であるが、生来すぐれた判断力を持ち、自分の属する小さな医師グループの中でウイルスへの警鐘を鳴らした。それで私たちの心の英雄になった。