マスク不足からミカンの皮で作ったマスクをする武漢市民(インターネットから)
マスク不足からミカンの皮で作ったマスクをする武漢市民(インターネットから)
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雪の上に書かれた「送別李文亮」の文字。北京市民が自らのやり方で彼の死を悼んだ(インターネットから)
雪の上に書かれた「送別李文亮」の文字。北京市民が自らのやり方で彼の死を悼んだ(インターネットから)

 新型コロナウイルスによる肺炎が流行した武漢で、作家の方方氏が発表し続けた日記が世界の注目を集めた。温和で、中国共産党の権威に挑むものではまったくなかったが、流行を食い止められなかったことについて責任を追及する考えを示しただけで、中国国内で2カ月にわたり数千万のネットユーザーの袋叩きに遭い、脅迫を受けた。この「私はウイルス――武漢ロックダウン日記」は、方方氏と同じく武漢で暮らす一般市民の男性「阿坡(A.PO)」が、中国共産党を批判する反省の書として記したものだ。「一人の健全な精神を持つ中国人」として、世界に向けてお詫びの気持ちを示したいという。「原因不明の肺炎」についていち早く警告を発した医師の死を知った阿坡は、罪の意識にさいなまれ始める。

【写真】雪の上に書かれた「送別李文亮」の文字

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■2020年2月6日 若い医師を死に至らしめたのは誰だ?(2)

 当局が「内部通報者」李文亮医師の遺体をさいなんでいることを、なぜ私は想像できたのだろうか? 私は繰り返し自分に問うてみた。

 私が病院の幹部であったら、幹部の一人であったら、私もそのような決定をし得たであろうか? なぜ私はそれほど正しく彼らを理解しているのか? 私は突然、次のように強烈に意識するに、強く断じるに至った――李医師を死に至らしめたのはウイルスではない。それは私であり、私たちであり、この国の一人ひとりである。ウイルスがうようよいる土壌からともに栄養を得ている私たち、一人の罪なき人を想像もつかない方法で殺すような体制を、力を合わせて構築した私たちだ。

 理性的に考えれば、今次のウイルス流行が終息するのも時間の問題だ。事後にはきっと体裁繕いの責任追及が行われるに違いない。いわゆる「責任を負うべき連中」が引っ立てられ、私たちは怒りの言葉を吐き出すだろう。私もきっとそういう場面にふさわしい、節度ある怒声を上げるだろう。

■ネット上での呼びかけ

 それでも果てしなく、ということはありえない。その後は1年もたたないうちにみんなまた平穏な日々に戻る。さらに私たちは財貨を追い求めるレールに戻って屈託なく前を向いてはばたく。

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