俳優 伊藤健太郎 (c)2020『宇宙でいちばんあかるい屋根』製作委員会
俳優 伊藤健太郎 (c)2020『宇宙でいちばんあかるい屋根』製作委員会

 朝ドラドラマ、映画まで数々の話題作に出演している。真っすぐで負けん気が強いが、「スカーレット」では役を生きて泣いた。AERA 2020年8月31日号から。

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 2014年のデビュー以来、時代劇から青春コメディー、ラブストーリーまで、さまざまな作品に出演してきた。

伊藤健太郎(以下、伊藤):俳優をやっていて、特定のジャンルにあまり偏りたくないと思っています。いろいろな作品をやらせてもらえるのはすごくうれしいです。自分としては、いただいた役を全力で演じるだけであって、演技の幅を広げようと意識しているわけではありません。映画や舞台、ドラマ、どの作品に出るかは「今年は舞台で磨きたい」とか、年ごとに変わってくるのかなと思っています。舞台は毎回お客さまが違うから新鮮に思えますし、映画はすごく緊迫感があって、たまにおなかが痛くなる時があるんですが、中毒性があります。

 その名を全国に知らしめたドラマといえば、凛々しい若君を演じた「アシガール」、原作漫画と同じ驚きのツンツンヘアで見る人を驚かせた「今日から俺は!!」、19年後期の朝ドラ「スカーレット」だろう。

伊藤:「今日から俺は!!」の伊藤(真司)のあの髪形は地毛でいきたかったので、そうしました。とにかく、現場のパワーがすごかった。出演できたことは大きな宝だと思っています。賀来賢人さん、清野菜名さん、橋本環奈さん、共演者がすてきな方ばかりで、撮影中は笑い疲れるくらい楽しかった。全員、「売れようぜ。みんなで売れて、旨いもん食おう!」みたいな思いも強くて、戦友みたいな感じですね。

「スカーレット」では、戸田恵梨香さん演じる喜美子の息子・武志を演じた。

伊藤:病気になってしまう役だったので、減量したり、見た目の作業をしているうちに、だんだんと内面的なことも考えるようになりました。僕はまだ死という感覚がわからないし、理解できません。でも、撮影が行われた大阪で、毎日、朝から晩までとんでもない量のセリフを喋っているうちに、死ぬことへの恐怖がわかる気がしてきて、ホテルの部屋に一人でいる時に、死ぬことがすごく怖くなったんですよ。

 話しながら、かすかに涙を浮かべ、目をぬぐった。

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