AERA 2020年8月24日号より
AERA 2020年8月24日号より

 医師たちが医療崩壊への危機感を募らせている。崩壊を防ぐ鍵となるのは、軽症者や無症状者への対応だ。AERAが実施した1335人への大規模アンケートや専門家、現場取材で苦境や課題が浮かび上がってきた。「医療崩壊」を特集したAERA 2020年8月24日号から。

【医師1335人緊急アンケート】いま、医療現場で何がおこっているのか?

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 医療崩壊に警鐘を鳴らす医師は少なくない。どうすれば、苦境を乗り越えられるのか。

 医師1335人へのアンケートによると、発熱外来のある医療機関の医師からは、PCR検査の拡充やPCRセンター設立を希望する声が多くあがった。PCR検査拡充の是非は、国内では議論が続いている。7月16日、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が、無症状者にPCR検査を公費で行わない方針で合意、政府に提言した。

 医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師は「世界の潮流から外れている」と指摘する。

「PCR検査は、陽性を見つける感度は感染初期は確かに低いといわれていますが、誤って陽性と判定する特異度はほとんどありません。科学誌『ネイチャー』は7月、『コロナの検査は感度より頻度』という記事を掲載しました。世界の専門家の間では、定期的にPCR検査を行うことが常識になりつつあります」(上医師)

 第1波では、6月末までに都内で新型コロナで亡くなった人の半数超が、病院内や福祉施設で感染していた反省もある。

「医師や看護師ら医療関係者にPCR検査をし、院内感染を抑止すべきです。警察官や自治体職員などエッセンシャルワーカーにも必要だと思います」(同)

 東京都杉並区の河北総合病院は、4月から都の要請で入院患者を受け入れている。同院を運営する河北医療財団の河北博文理事長(70)は、「感染者数の増減に一喜一憂せず、重症者や死亡者に的を絞るべき」と語る。

「そのためにも軽症者や無症状の陽性者は一定期間、病院ではなくホテルなどでの隔離を徹底すべきです。それを徹底する法律を、国会を開いて早急に決めてほしい」

 医師アンケートでも、軽症者や無症状者に対して自宅やホテルで療養を求める声が目立った。

 埼玉医科大学総合医療センターの岡秀昭医師は、軽症者の健康観察こそ重要と考える。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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