永瀬:小野田は内気ではありますが、仲間のためには惜しみなく努力して頑張ることができる人。自分のためではなく人のために頑張れるのは、尊敬できるし、強いですよね。もともと持っていた強さが、自転車との出合いによってようやく引き出されたんだと思います。楽しさを知って、人との出会いがあって、取り巻く環境も変わってきて……最初の方の小野田と、県大会に出場している小野田の違いは、ぜひ見てほしいと思います。

 クライマーやスプリンター、さまざまなタイプの選手がいて、勝つためにエースのゴールをアシストする。そんな小野田たち自転車競技部の“チーム感”も見どころだ。自転車走行シーンは、CGを一切使わず、すべてキャストが実際に走った。仲間である同級生・今泉俊輔(伊藤健太郎)や部長の金城真護(竜星涼)など、“チーム総北”全員で特訓して撮影に挑んだ。

永瀬:撮影前から、チーム総北全員で河川敷を走って練習しました。大会で見るような、縦一列の集団で走る練習もして。練習を始めたころ、僕、帝国劇場で舞台中だったんです。本番がある日は劇場に自転車を持ち込んで乗って、休演日にはみんなで練習して。ずっと走っていましたね。体力的には疲れましたが、楽しさが勝っていました。ロードバイクは、普通の自転車とは全然スピードが違うんです。ひと漕ぎで進む速さが楽しかったし、なにより自転車を通して共演者のみなさんとの仲が深まりました。部活みたいな感じで、クランクインする前からチーム感ができあがっていました。インしてからも映画の設定のままみたいな関係性が続いて、みんなでご飯を食べに行ってワイワイしたり、本当に「青春!」みたいなことができました。普段、そういう距離の詰め方はあまりできませんよね。チームスポーツに挑戦するからこそできたことだと思います。

 大勢のエキストラが参加した本物さながらの県大会のシーンでは、今まで感じたことのない緊張感も味わった。

永瀬:たくさんお客さんが入っているのを見て、本当に大会に出場している気分になりました。周りの緊張感が伝わってきて、場の雰囲気にのみ込まれそうにもなりました。だから、そこは原作の小野田とまったく同じ気持ちだったと思います。

次のページ