AERA 2020年8月10日-17日合併増大号より
AERA 2020年8月10日-17日合併増大号より
小池百合子東京都知事は会見で「危機的な事態」と語り、「感染拡大特別警報」を示した/2020年7月30日の会見で (c)朝日新聞社
小池百合子東京都知事は会見で「危機的な事態」と語り、「感染拡大特別警報」を示した/2020年7月30日の会見で (c)朝日新聞社

 新型コロナの感染が再び拡大している。経済優先でブレーキはかからない現状に、専門家は重症者の増加を予測する。第2波では、感染防止と経済をどう両立すればいいのか。AERA 2020年8月10日-17日合併号で掲載された記事を紹介。

【写真】小池百合子東京都知事

*  *  *

 感染拡大が迫っていた2月中旬、政府の対策本部がはじき出した1日あたりの検査能力はわずか300件、同時期の韓国は既に1日8千件をこなす能力を備えていた。相談や受診の目安を「37度5分の発熱が4日以上」と定めて検査を極端に絞らざるを得なかったのは、日本がPCR後進国だったからだ。

 現在は1日3万2千件以上の検査能力を備えるまでに整備されたが、感染者が増大していた4月上旬にはその能力はまだ半分もなく、特に東京には「PCR難民」があふれていた。それなのに、いわゆる「第1波」をいったん抑え込めた要因は検証されていない。このフワッとした「成功体験」が危機意識を鈍らせているのではないか。

 ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストが言う。

「感染拡大への対応力は、政府にも医療にも私たちにもついています。一方で経済対応は量が決まっているのに、コロナの感染規模が拡大してストックされても、一切その言い訳を聞いてくれない。新規感染者数から重症化する率も数学的に決まりますが、普通に計算すると8月上旬から中旬にかけて東京都で重症者は100を超えます。のんびりしすぎじゃないですか」

 東京都がホームページで公開している医療提供体制で、重症患者のために確保している病床は100床。7月30日時点の重症者は22人だ。医療崩壊の扉をこじ開けるのか、鍵を掛けるのか。それは根拠を持って行われるべきだ。矢嶋さんは続ける。

「感染防止と経済の両方をやらなきゃいけないので、ロックダウンは避けるべきだとみんな頭では理解している。でも第1波のときに科学的な検証をしていないので、例えば店の営業を時間で止めればいいのか業種で縛ればいいのか根拠がない」

次のページ