元朝日新聞記者 稲垣えみ子
元朝日新聞記者 稲垣えみ子
これが噂のリアルエコバッグ! ま、噂してるのは自分だけだが人生そんなもん(写真:本人提供)
これが噂のリアルエコバッグ! ま、噂してるのは自分だけだが人生そんなもん(写真:本人提供)

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

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 前回、我がゴミの驚異的な少なさを自慢したところだが、どうもまだ自慢しきれていない気がするのでさらに書く。

 前回は、ゴミを減らすには買い物の時の行動が大切であると申し上げた。だが私にはもう一つ、ゴミ削減にあたっての非常に大きな心構えがある。それは「ゴミの定義を変える」ということだ。

 同じものを見ても、ある人は「ゴミ」と思い、ある人は「資源」と思う。に小判のことわざがある通り、千利休が太鼓判を押した天文学的な値段のついた名器も、見る目のない者にとってはただの古ぼけたガラクタであったりする。もちろん我らは千利休になれるわけではない。だが自分が何を「美しい」とか「役に立つ」とか「ありがたい」と思うかを自分で決めることはできる。

 例えば、私の大好物にゴーヤの種がある。油で揚げるとクリスピーで上品なナッツとなるのだ。だがほとんどの料理本には「捨てる」と書いてある。どちらが正しいというわけではなく、どちらを選ぶのも自分次第なのである。

 で、いうまでもなく、ゴミの定義が狭い人のゴミは減る。さらに、ものを買わずとも必要なものがどんどこ手に入るので否が応でもカネを使わなくなる……と、こんなもっともらしい説教を長々としたのはさらなる自慢話がしたいからで、実はここからが本題。

 私、エコバッグをわざわざ買うという行為にかねて矛盾を感じており、使い捨てのレジ袋を材料に、友達の家で眠っていた毛糸など、ほうっておいたらゴミになるものだけを使ってカバンを編んだ。まさにこれぞリアル・エコバッグ! 同じ志を持つ仲間とゴミを宝にするプロジェクトを結成し、うまいこと売り出していずれNYの近代美術館で展示してもらうという壮大な目標を立てて頑張った。

 だがあまりに制作に時間がかかりすぎ、そうこうするうちにレジ袋は有料化されゴミとは言えなくなってしまった。というわけで、これは最初で最後のエコバッグ、ある意味歴史の証人となり果てたのである。

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

AERA 2020年8月3日号

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稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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