東京医科大学病院教授 濱田篤郎(はまだ・あつお、64)/東京医科大学病院渡航者医療センター教授。都の新型コロナ対策審議会メンバー。『パンデミックを生き抜く 中世ペストに学ぶ新型コロナ対策』(朝日新聞出版)が発売中
東京医科大学病院教授 濱田篤郎(はまだ・あつお、64)/東京医科大学病院渡航者医療センター教授。都の新型コロナ対策審議会メンバー。『パンデミックを生き抜く 中世ペストに学ぶ新型コロナ対策』(朝日新聞出版)が発売中

 新型コロナの感染拡大を受け、政府は突然、旅行支援策の対象から東京を除外した。経済と感染防止のバランスはどうあるべきか。AERA 2020年7月27日号は、濱田篤郎・東京医科大学病院教授に聞いた。

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「経済は大切だと思います。経済が原因で自殺者が出ることもあるのですから。ただ、感染状況を見ながら対応する必要があります。時期の問題があるわけで、今、例えば東京では感染が広がっている段階ですが、この時期に制限を緩めたり人の動きを促進したりするような政策を進めるべきではありません」

 渡航医学や職業感染症を専門とする東京医科大学病院の濱田篤郎教授は、政府が22日から東京以外で始めようとしている観光分野の補助事業「GoToトラベル」にこう警鐘を鳴らす。

 経済と感染制御の両立。新型コロナの問題では、当初からこの板挟みに悩まされてきた。東京都内で判明した新規感染者が当時過去最高の243人を数えた7月10日、政府は社会経済活動の段階的な再開を計画通り進め、イベント参加者の上限を1千人から5千人に緩和した。さらにこの日、赤羽一嘉国土交通相が「GoToトラベル」を前倒しで始めると発表し、野党や各地の首長から異論が続出している。

 濱田さんは、東京都を中心とした首都圏の感染状況についてこう考えている。

「今までは新宿や池袋など夜の街を中心にした『点の広がり』だったのですが、このところ他の地区からも感染者が出て『面の広がり』になっています。年齢も若い人たちが中心だったのが、高齢者もある程度増え始めています。4月の第1波の状況に近づいていると言えます」

 政府は「医療体制が逼迫(ひっぱく)していない」ことを理由に2度目の緊急事態宣言の必要はないと説明しているが、感染が高齢者にも広がっていけば、重症者はいずれ増える。濱田さんは「遅かれ早かれ、医療は逼迫することになります」と述べ、このまま経済重視にシフトしていけば歯止めは利かなくなると危惧する。

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