テレワークの中で、社員が従来の仕事の「ムリ」「ムダ」に気づいたことも大きいでしょう。会社は業務フローの見直しやデジタル化を進めるのか、「できない理由」を並べ続けるのか、社員はよく見ています。

 コロナ禍で、社員が会社を評価する視点は変わりました。これまでは、上司との人間関係や人事評価への満足度など自分と会社との個別の関係性に重点が置かれました。しかし、全ての企業がコロナ禍に直面したことで、「従業員を大切にする姿勢」や「危機への反射神経」という企業の本質に関わる共通の物差しが生まれ、他社と比較できるようになったのです。

 その結果、「文句はあるけど多少我慢していれば会社は社員を守ってくれる。他社も大して変わらない」というのは、幻想だと気づいた人たちがいます。彼らは、自分のキャリアは会社任せにせず、自律的に築かなければいけないんだ、と改めて感じている。クチコミからはそんなことも読み取れます。コロナ禍は見えづらかった企業の本音や真の姿を白日の下にさらすと同時に、人々のキャリア観にも変化をもたらしています。

(構成/編集部・石臥薫子)

AERA 2020年6月22日号