「EUからの離脱」を掲げたボリス・ジョンソン英首相。最大の功績は、自らがコロナウイルスに感染し、緊急入院を経て復活したという点です。退院後の会見で、自らの治療を担当した医師、看護師の実名を挙げて感謝の意思を表明しました。感染してしまうことは仕方ないのですが、入院していた彼はコロナ対策の陣頭指揮をとっていないので、一国を預かるリーダーとして評価するのは難しいです。

 ドイツのメルケル首相は圧倒的なコミュニケーション能力があります。政府が緊急事態下で取らなければならない措置を、科学的な根拠を元に国民に説明し、広く合意を得ることに成功しました。ある意味、強権的な中国の対極にある民主的なリーダーシップです。ドイツは連邦制であることに加え、EUの中心的な役割を担ってきました。だからこそ、ドイツにとって国境を閉鎖する、州境を閉鎖するというのは、自らのアイデンティティーに直結する極めてつらい決断でした。極端にドイツだけを守るのではなく、EU全体の国にも目配りしながら、非常に冷静な対応に終始。久しぶりにドイツの底力を見た思いがしました。

 台湾の蔡英文(ツァイインウェン)総統は、コロナ対策に関しても、中国とは異なる「台湾」を強調しました。早々と中国からの入国を制限。この決断は国内で高く評価されています。ただ、その半面、この非常事態を政治利用した側面もあります。つまり、非常事態が台湾ナショナリズムに火をつけたのです。私は台湾人ではありませんので、これを軽々しく評価することはできません。ただ、台湾は現状では世界に先駆けて感染者数を激減させました。もし、政治利用をせずにこれを実現できたかと言えば、難しいのではないでしょうか。

●中野晃一・上智大学国際教養学部教授・同学部長による評価

各5点満点。(A)決断力(B)実行力(C)情報発信力(D)責任感(E)市民の支持
※5点満点の相対評価。総合は5項目の平均

安倍晋三(日本国首相)総合…1.4点
(A)1点(B)1点(C)2点(D)1点(E)2点

・ドナルド・トランプ(アメリカ大統領)総合…2.0点
(A)2点(B)2点(C)3点(D)1点(E)2点

・アンゲラ・メルケル(ドイツ首相)総合…5.0点
(A)5点(B)5点(C)5点(D)5点(E)5点

・ボリス・ジョンソン(イギリス首相)総合…3.0点
(A)3点(B)2点(C)4点(D)3点(E)3点

・習近平(中国国家主席)総合…3.2点
(A)4点(B)5点(C)2点(D)3点(E)2点

・蔡英文(台湾総統)総合…4.2点
(A)5点(B)4点(C)4点(D)4点(E)4点

(編集部・中原一歩)

AERA 2020年4月27日号

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