アメリカ大統領 ドナルド・トランプ(写真:gettyimage)
アメリカ大統領 ドナルド・トランプ(写真:gettyimage)
AERA 2020年4月27日号より
AERA 2020年4月27日号より

 非常事態ほどリーダーの力量が問われる。アメリカをはじめイギリスやドイツなど世界のトップは、新型コロナウイルスへの対応は適切だったのか。AERA2020年4月27日号では、上智大学の中野晃一国際教養学部長に、決断力、実行力、情報発信力、責任感、市民の支持の5項目で評価してもらった。

【世界のリーダーの中で5点満点を叩き出したのは…】

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 トランプ大統領は大統領選で再選することの文脈でしか、この非常事態を捉えていないようにみえます。

 すでに中国では感染爆発が起きていた。にもかかわらず初動で米国は大丈夫だと「現状否認」しました。感染症を甘くみていたのです。トランプは新型コロナウイルス蔓延を、国民の健康や生命の問題としてではなく、経済に対する脅威としか受け止めていなかったのです。好調な経済をアピールすることが再選への道筋でした。

 今、米国のメディアはあるジレンマに陥っています。非常事態なので毎日、トランプは記者会見を開くのですが、そこでの発言は相変わらず「フェイク」「デタラメ」のオンパレード。とても公益にかなわない。最近では世界保健機関(WHO)が過度に中国寄りだと非難し、同団体への資金拠出を停止すると発表。メディアも大統領が記者会見すると言えば取材しないわけにはいきません。

 トランプにしてみれば、どういう形であれマスコミに露出すれば一定層の支持は得られる。その層が一票を投じてくれれば再選できると考えているのです。結局、自国第一主義が守るものは、国民ではなく経済だったということです。

 感染症の予防は人と人との接触をどれだけ減らすかということに尽きます。問題はその政策のスピード感、その実効性です。中国の習近平(シーチンピン)国家主席は、もっとも強権的な方法で成し遂げました。世界に先駆けて「武漢封鎖」というびっくりするような先例をやってのけたのです。緊急事態宣言はコロナとの闘いであるのと同時に、内外に国威をPRする情報合戦という側面もあります。特徴的なのは米国とは違い、国家の責任者である習近平氏があまり表に出なかったことです。責任を取りたくないという意思の表れです。

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