東京商工リサーチによると、新型コロナの影響による経営破綻は9日現在で49件。ただ、中小零細企業を中心に状況は悪化し続けており、情報部長の原田三寛さん(35)は「新型コロナの影響による倒産は、1万件を突破するのが確実だ」とみる。リーマン・ショック後の08年、09年の倒産件数は2年連続で1万5千件を超えており、それに迫る勢いだ。
「次の焦点は、政府の経済対策で大型の倒産を防げるかどうか。大企業が倒れればサプライチェーン全体に影響が出て事態はさらに悪化してしまう」
世界経済の再生に向け、カギを握るのは中国と日本だ、と前出の武田さんは言う。
「感染のピークアウトを宣言している中国は経済活動正常化に向けた動きを一歩早く進めています。感染の第2波に見舞われるリスクも否定できませんが、このまま経済が立ち直れば、中国は1~3月期がボトムで4~6月期以降は回復へ向かう戦略を描けます。牽引(けんいん)役になるのは難しいかもしれませんが、世界経済を支える役割は期待できます」
では日本は、どんな役割を担えるのか。
「日本は現段階では欧米に比べて経済への打撃は抑えられています。これ以上落ち込まなければ、中国とともに世界経済再生の下支え役になる期待をもてます」(武田さん)
今年5月にも感染拡大のピークアウトのめどが付けば、政府の打ち出す大規模な需要刺激策を追い風に、輸出を含め先送りされた需要が景気の持ち直しを先導できる、という。そうなると、新たな五輪年となる21年は、先送りされた五輪関連需要による押し上げ効果も見込まれるため前年比2%を超える成長が期待できる、と指摘する。
政府が7日に決定した緊急経済対策には、企業による生産拠点の国内回帰を後押しする費用などとして約2400億円が盛り込まれた。今回の感染拡大で部品などの供給網(サプライチェーン)に大きな影響が出たためだ。
武田さんはこうした動きを評価しつつも、「中国だけに依存しない形へ安全網を増強する必要はあるが、自由貿易体制に依拠する日本がグローバル・サプライチェーンそのものを否定するのはナンセンス」とくぎを刺す。
世界経済が窮地に陥ると、インバウンドに依存しすぎるのはよくないとの意見が出るが、それも違う、と武田さんは訴える。人口減少が進む日本は長い目で見たとき、インバウンドを成長の柱に据え、今後も関連産業をしっかり守らなければならない、との基本認識だ。
「日本は内向きになってはいけないのです」
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2020年4月20日号