3月の会見終了後、記者から詰め寄られるIMFのゲオルギエバ専務理事/米ワシントンDC(写真:gettyimages)
3月の会見終了後、記者から詰め寄られるIMFのゲオルギエバ専務理事/米ワシントンDC(写真:gettyimages)
ニューヨーク証券取引所に対峙し、ウォール街の象徴となっている「恐れを知らない少女像」にも新型コロナウイルス予防のためのマスクが掛けられていた(写真:gettyimages)
ニューヨーク証券取引所に対峙し、ウォール街の象徴となっている「恐れを知らない少女像」にも新型コロナウイルス予防のためのマスクが掛けられていた(写真:gettyimages)

 感染拡大を食い止めようと世界各国が経済活動に急ブレーキをかけた。世界経済は「底」を打って反転できるのか。カギを握るのは日本と中国だという。AERA2020年4月20日号で掲載された記事から。

【写真】「恐れを知らない少女像」にもマスクが掛けられていた

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「私の生涯において、いま最も深い闇の中に人類はいる」

 1953年生まれのゲオルギエバ・国際通貨基金(IMF)専務理事は4月3日の会見で、新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済の行き詰まりをこう評した。

 世界経済はどこまで悪化するのか。目安の一つが2008年のリーマン・ショック(世界金融危機)だ。IMFは20年の世界全体の実質成長率が、リーマン後の09年(マイナス0.1%)以来11年ぶりのマイナス成長になると予測。ゲオルギエバ専務理事は「リーマン・ショックよりはるかに悪い」との現状認識を示している。

 世界の有力金融機関で構成する国際金融協会(IIF)は3月下旬、20年の世界経済成長率がマイナス1.5%に落ち込む見通しを発表。日本はマイナス2.6%、米国がマイナス2.8%、ユーロ圏がマイナス4.7%と「総崩れ」を予想した。

 各国政府は今、感染抑制を最優先し、人の移動制限や生産停止など経済活動への制限を強めている。世界経済が後退局面に入るのは不可避だ。しかし、感染拡大のピークアウトさえ確認できれば、需要を喚起する政策誘導によって速やかな景気回復を図ることができる、とのシナリオを各国は描いている。

 だが伊藤忠総研チーフエコノミストの武田淳さん(54)はこう警鐘を鳴らす。

「各国とも4~6月期をコロナ・ショックによる経済低迷の底と位置付け、その後、景気回復を図る戦略を描いていますが、現状では決定的な治療方法がなく、医療システムが崩壊すれば状況はより深刻化するリスクも抱えています。このため、世界経済はリーマン・ショック並みかそれ以上悪化する可能性を否定できません」

 日本も例外ではない。

「医療崩壊が現実味を帯びつつある日本も、日経平均が1万5千円まで下振れするリスクがあると見たほうがいい。リーマン・ショック時のような金融ショックが起きれば、1万5千円割れもあり得るでしょう」

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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