1カ月の間に、子どもたちの学力差が開いたのでは──。そう心配する親も少なくない。

「勉強のできる子はいいんです。自分からどんどんやるから。でも、うちの子はそういうタイプではないので……」

 東海地方の小学3年の母親は言う。学校からドリルを渡されたが、提出義務はない。朝、その日やる箇所を2ページ決め、子どもに渡すもののやっていないことが多いという。

「ガミガミ叱って、勉強嫌いにしてしまうのも怖い。でも、こうしている間にも、同級生たちとの差が開くのかと思うと不安が募ります」

 前出の西東京市の母親は、地域による学力差を指摘する。

「子どもの学校は宿題が一切出ませんでしたが、隣の市は週に1回登校日を設け、その都度課題を出していたようです。4月からは西東京市も登校日を設けるようですが」

親はこうした学習面の不安をどう解消し、子どもと向き合えばいいのだろう。教育評論家の親野智可等(おやのちから)さんは、次のように答える。

「大事なのは、まず親が焦らないこと。親の不安は子どもに伝染します」

 親野さんがむしろ危惧するのは、休校期間中の家庭内の雰囲気だ。親子が一緒に過ごす時間が長くなるなか、子どもの勉強や生活態度をめぐり叱ることが多くなっていないか。

「みなさん“狭い学力”にとらわれすぎています。それ以前に、もっと大事なことがあります」

 親野さんによれば、学校の勉強以前に重要なのは、(1)自己肯定感(2)信頼感(3)自己実現力の「三つの非認知能力」のベースを築くこと。親子関係が悪くなると、自己肯定感も、他者への信頼感も損なわれる。長期休暇中、子どもが好きなことばかりしていたら、むしろ「自己実現力を伸ばす好機」。否定的にとらえてはいけないという。(編集部・石田かおる、フリーランス記者・宮本さおり、大楽眞衣子)

AERA 2020年4月13日号より抜粋