アリサさんが目指すのも「モテ」や「男性ウケ」ではない。「きれいになることで、自分に自信を持てるようになりたい」のだという。

 田中さんが、自身の欠点やうまくいかなかった恋愛の話なども、隠さずに話してくれるところにも好感を抱いている。バラエティー番組で田中さんが「誰かに電話をしたくなっても、できる人がいない」と話していたときには、「みな実ちゃんにも心の闇があるんだ」とジーンときた。

「私も電話帳に何人も名前は載っているけど、親友はいない。こういう素の部分を見せてくれるみな実ちゃんに、嘘はないと思う」(同)

 コラムニストの中森明夫さん(60)はこう分析する。

「美しくなる努力やネガティブな一面といった『素の姿』を見せる。かっこつけずに、内面を見せたことで、女性の共感を集めたんでしょう」

 考えてみると、昔から「ぶりっこ」は、女性に嫌われるだけの存在ではなかった。

「元祖ぶりっこ」といえば松田聖子さん(58)。鼻にかかる高い声やかわいらしい仕草、テレビ番組での「ウソ泣き疑惑」などから反感を買う一方、女性たちはその髪形をこぞって真似し、彼女を支持した。

 2000年から14年頃にかけては、さとう珠緒さん(47)、小倉優子さん(36)、局アナ時代の田中さんなど、決めゼリフやキャラ設定のある「ぶりっこ」が活躍したが、その人気はバラエティー番組を中心とした枠にとどまった。

 そして今、ぶりっこ第3世代。第2世代を引っ張った田中さんが「キャラ設定」という枠を飛び出し、かわいい仕草はそのまま、女性に向けて美容情報や自身の気持ちを発信する。20代では「モテクリエイター」を自称するゆうこす(菅本裕子)さん(25)も、代表的な存在だ。

 かわいいだけで本音が見えない人は応援できない。表も裏も見せることで、いまどきのぶりっこは、憧れの存在へと変わったのだ。(ライター・井上有紀子)

AERA 2020年3月30日号より抜粋