抗酸化作用がある成分は、チョコレートに含まれるポリフェノール、キウイやレモンなどに含まれるビタミンC、トマトに含まれるリコピン、ニンジンに含まれるカロテンなどほかにもある。だが、そのほとんどは、1時間前後で効果がなくなっていくという。例えば、赤ワインに含まれるポリフェノールの一種「アントシアニン」はイミダペプチドより抗酸化力が強いが、自律神経に届くまでにほとんど消費されてしまう。

 一方、イミダペプチドは、消化管で吸収され、いったん二つのアミノ酸に分解される。その後、血液の流れに乗って脳や骨格筋まで運ばれ、再び合成されてイミダペプチドに戻る。再合成されることで効果が持続し、もっとも消耗の激しい脳の自律神経の中枢に、ピンポイントで働きかけることができる。こうした点が、ほかの抗酸化成分と一線を画す最大の特長だ。

 梶本院長が統括責任者を務めた03年10月から07年9月まで実施した産官学連携の「疲労定量化および抗疲労食薬開発プロジェクト」で、日常的に疲労を自覚している207人の被験者を対象に科学的な実験を行った結果、1日200ミリグラムのイミダペプチドを2週間摂取し続けると76%の人が「疲れにくくなった」と自覚するという結果が出ている。

 だが、効果が出るまで2週間は、長い。食べてすぐ疲れが取れる即効性のある食べ物はないのか問うと、「ありません」と梶本院長。

 鶏むね肉以外ではダメなのか。

 イミダペプチドは、マグロやカツオなど全身運動をする回遊魚や、豚肉や牛肉などにも含まれている。しかし含有量は鶏むね肉より少なく、例えばマグロで1日200ミリグラムのイミダペプチドを摂取しようと思えば、毎日160グラム食べる必要があると、梶本院長は言う。

「豚ロース肉であれば1日130グラム、牛肉なら1日400グラム。特に、牛肉は脂肪分が多くカロリーも高いので、生活習慣病のリスクが高くなります。対して鶏むね肉は低脂肪・低カロリーで高たんぱく、しかも経済的です」

(編集部・野村昌二)

AERA 2020年3月30日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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