入試で数学を問わずとも、積極的に数理教育を行う大学もある。

 成城大学は文系学部しか持たないが、15年度からデータサイエンスの授業を導入、19年4月には「データサイエンス教育研究センター」を開設した。全学部の学生がデータサイエンスに関連する科目を受講でき、この授業は定員を上回り抽選になるほど人気だという。文系大学にもかかわらず、掲げるのは「理数系教育の充実」だ。同センター長の増川純一教授は、その理由をこう説明する。

「例えば、芸術や人文学の分野で画家や文豪の筆致の分析、古文書の解読など、これまで“題材”として扱われてきたものが、技術の発展で“データ”として見ることができるようになりました。今やデータと無縁の学問はありません。数学への苦手意識が植え付けられている学生も多いのが現状ですが、バリアーを作らず、あきらめずに学習することで、壁を越えることができます」

 結果も出している。マーケティングリサーチ会社のマクロミルが主催する「EDGE」は、企業が実際に抱えるビジネス課題をテーマとするマーケティング戦略立案コンテストだ。昨年優勝した6チームのうちの一つが成城大学の学生によるチームだ。

 チームのメンバーだった3年生の男子学生は、初めは「文系の自分にはAIや機械学習の技術は関係ないと思っていた」と振り返る。当初は授業の内容を理解するのが大変で、解説がまとめられたサイトを見たり、関連図書を読み漁ったりして復習を重ねた。

「数理科目が自分にとって身近な学問になり、ニュースで取り上げられた数字が信用に足るものかどうか考えたりするようになった。世の中の数字について敏感になりました」

 現在就活中だが、すでにデータアナリストやデータサイエンティストのポジションで内定を獲得しているという。(編集部・高橋有紀)

AERA 2020年3月23日号より抜粋