撮影/馬場岳人
撮影/馬場岳人
数理・データサイエンス教育をめぐって大学が変化した(AERA 2020年3月23日号より)
数理・データサイエンス教育をめぐって大学が変化した(AERA 2020年3月23日号より)
情報分野への志願者数・倍率は増加している(AERA 2020年3月23日号より)
情報分野への志願者数・倍率は増加している(AERA 2020年3月23日号より)

 私大文系出身者であれば、大学受験で数学を「捨てた」人も少なくないだろう。だが、文系学部であっても、入試科目で数学必須化、理系枠を設けるなど、数学が重要視され始めている。その背景には、企業や社会でデータサイエンスやAIの需要や必要性が増していることがある。AERA2020年3月23日号は、「数学必須の時代」を特集。各大学の取り組みを追った。

【図を見る】数理・データサイエンス教育をめぐって大学が変化した

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「数学をやっててよかったと思いました」

 そう話すのは中央大学商学部経営学科に通う1年生の男子学生。商学部では、会計や金融・財政の授業がある。単位を落とす同級生もいる難しい授業だが、「楽に単位が取れた」のは数学をやっていたからだという。

 たとえば資産運用における72の法則。72を金利で割ると、資産が2倍になるまでの年数を計算できるという算式がある。なぜ72なのかは、対数(log)の考え方がわからなければ理解できない。

「僕は数学をやっていたから一発で理解できたけど、入試で数学を『捨てた』同級生たちは大変そうでした」

 高校時代は国立文系で、数学は「好きでも嫌いでもない」科目だった。中央大の入試では英語・国語のほか、数学・世界史を選択。数学で点数を取れたことが合格につながったと分析している。

 入試で数学を「捨てる」──。

 私大文系出身者であれば、思い当たる人も多いだろう。国公立大では文系でもセンター試験で5教科7科目が基本であるが、私大では多くの場合、数学は選択肢の一つにすぎず、必須ではない。河合塾によると、私立大個別試験の36%が入試科目に数学を課していないという(2018年実施入試)。

 しかし今、入試の「数学」を取り巻く状況に変化が訪れている。

 象徴的なのが早稲田大学の政治経済学部だ。21年実施の入試から数学を必須化すると発表して話題になった。これまで一般入試は外国語と国語が必須で、日本史、世界史、または数学から1科目選ぶという3科目の独自試験を行ってきた。それが来年度からは、大学入学共通テストと学部独自試験が必須になる。共通テストでは外国語・国語・数IAと選択科目(地歴、公民、理科、数IIBから一つ)が各25点という配点だ。

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