同学部は、学部4年と修士1年の計5年で修士号が取れるプログラムを持つ。経済学では数学が大学院進学の大きなハードルになっている実態がある。この入試で入学した理系人材には、大学院に進学し、高度な数学知識を研究に生かしてもらいたいという狙いもあるという。

 こうした入試の変化は、AIやIT人材の不足と無縁ではない。同学部の理系入試のチラシにも、「ビジネス力を備えたデータサイエンティストの養成」「Society5.0で活躍できる人材」の文字が躍る。

 経済産業省は、30年にはビッグデータやAIを開発できる「先端IT人材」が45万人不足すると予測する。25年までにAIの基礎知識を持つ人材を年間25万人育てる目標を掲げ、文系・理系を問わず、すべての大学生がAIなどの初等教育を受けられるよう、大学に求めるという。

 ここ数年でデータサイエンス系の学部が次々と開設され、文科省は「数理及びデータサイエンスに係る教育強化」の拠点校・協力校を選定した。データサイエンスやAI教育を、全学部の学生に必修とする大学も登場している。

 データサイエンスなど情報分野への志願者数は伸びており、とくに私立では15年の13万7263人から19年の22万3766人と、4年間で1.6倍となっている。

 こうした情報教育の基礎になるのが数学だ。19年3月には、経産省と文科省が合同で、「数理資本主義の時代~数学パワーが世界を変える~」という報告書を出した。IT機器の普及やAI、ビッグデータの活用によって進行中の「第四次産業革命」を主導するために、どうしても欠かせない科学は「第一に数学、第二に数学、そして第三に数学」と記している。

 私立文系の場合、入試で数学を必須化する際に壁となるのが、志願者数の減少だ。「数学が嫌いだから」という理由で、私立文系を選択する学生は少なくない。実際、数学を必須化したために志願者数を減らし、その後「選択式」に変更した私立文系学部はいくつかある。

 前出の駿台教育研究所の石原さんは今後の私立文系の数学入試について、「MARCH以上のレベルで、一部の定員で数学が取り入れられることはあるかもしれない」と予想する。

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