そうした脅威に対し、ネットフリックスが、いま精力的に進めているのは、同社のサービス上で観られる作品数を増やし、質も向上させる取り組みだ。

ドラマシリーズの素晴らしい作品群のレイヤー(層)に加えて映画のレイヤーも作りつつあり、同様に人気を呼ぶものになると思う」

 昨年来話題になっている、ロバート・デニーロやアル・パチーノらが出演した映画「アイリッシュマン」(マーティン・スコセッシ監督)は、その好例だ。

■1話10億円の制作費

 米国内の会員の伸びが鈍化するなかで、海外での会員数は急増している。日本を含む国際市場のさらなる開拓は、ネットフリックスの今後の戦略上、きわめて重要になりつつある。

 そして、ネットフリックスにはまだまだ余力がある。米国の最近の大作ドラマは、1話10億円規模の制作費が投じられているとされ、同社もその規模の作品を手がけてきているからだ。

 ピーターズ氏は日本での投資拡大に触れるだけでなく、制作費についてもこう明かした。

「ハリウッドの水準と日本の水準を分けて見ているということは全くない。我々は作品ごとに適正な投資水準がどの程度なのか考えており、それを引き上げられる機会を見つけたいと思っている」

 日本のコンテンツ業界に、ネットフリックスが、ハリウッドから、さらに大きな仕掛けを持ち込むのは時間の問題だろう。(朝日新聞サンフランシスコ支局長・尾形聡彦)

AERA 2020年3月16日号

※AERA 2020年3月16日号では、「ヒットの方程式」を全10ページで特集。動画配信の巨人「Netflix」のクリエイティブを統括するディレクターら“中の人”も徹底取材しました。