選ばれたのは、「オリンピック」をテーマにしたポスターでは、漫画家の浦沢直樹さん、書家の金澤翔子さんなど。「パラリンピック」をテーマにしたポスターは、AERAの表紙でもおなじみの写真家の蜷川実花さんのほか、マンガ家の荒木飛呂彦さんなど。当代きっての人気アーティストたちそれぞれが大会への思いを込めたポスターを制作した。

 例えば画家の大竹伸朗さんが、オリンピックをテーマに放ったのは、「Space Kicker」と名付けた作品だ。昨年大竹さんは、愛媛県宇和島市にできたホールの緞帳(どんちょう)の原画を制作。そのときに切り取った残りの紙をそのままの形で使いながら、前回のオリンピック時、小学生だった大竹さんが初めて習ったという「切り絵」の手法で、オリンピックを描いた。

「美術の国際展にしろ、オリンピックにしろ、国同士の競争の場にしてしまうことが、古いというか、ズレてきてしまったかなという思いがあった。そういう次元を超えて、宇宙のこと、みたいなものが形にならないかと漠然と考えた」(大竹さん)

 どう表現したらいいか思いあぐねていたとき、緞帳を作った残りの紙に「人のような、エイリアンのような」形をしたピンクの紙を見つける。そこから絵が浮かび、ポスターができあがった。

「神さまというと大げさだけど、宇宙を司(つかさど)るエネルギーみたいなものが、ボールの形の天体みたいなものと、戯れているイメージ」(同)

 そんなポスターは、切り絵なだけあり、印刷物でありながら、前に立つとモチーフが浮き出てくるよう。同時にこんな作家の思いも浮かび上がる。

「一生に一回でも東京五輪を経験することが、今の子どもたちや10代にとって、何かしら未来の希望になってほしい」

 一方、グラフィックアート界で注目の若手ユニット「GOO CHOKI PAR(グーチョキパー)」もアートポスターを制作した。「オム プリッセ イッセイ ミヤケ」のビジュアルなどでも注目される、85~86年生まれの浅葉球さん、飯高健人さん、石井伶さんの3人で、パラリンピックをテーマにした。

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