最初にやったのは、パラスポーツを知ること。3人でさまざまな種目の観戦に出かけ、その迫力に圧倒されたという。

「公式アートポスターであると考えると、テーマは日本らしさや平和に対して、もちろんスポーツについてもいろいろある。そのなかで僕らは、人が根源的に持つプリミティブな強さみたいなものを出したいと思いました」(飯高さん)

 64年のオリンピックを知らない世代だが、今もグラフィックアートの金字塔である当時の公式ポスターのように次の世代にも語り継がれる作品を目指す。

前出の選定委員の秋元さんは、東京都現代美術館で並んだ20点の公式アートポスターを前にこう感じたという。

「多様な一人一人がいて、それが集まって社会を作り、個々の思いで日本ができあがっている。そんな日本の姿をありのままに映す展覧会になったと思います。全員が同じ方向を向いていただろう64年とは時代も変わり、アーティストも多様化した。バラバラのように見えて、実は今のほうが健全だと思っています」

 オリンピック・パラリンピックをきっかけに、アートの現在を感じられる展覧会だ。東京での展示は2月16日までだが、各地で展示する予定もある。

「作品の前で、その大きさの迫力を体感してほしい」(秋元さん)

(ライター・福光恵)

AERA 2020年2月10日号