刑務所から学校や社会全体の閉塞感を描く 是枝監督も注目の映画「プリズン・サークル」が訴えるもの (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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刑務所から学校や社会全体の閉塞感を描く 是枝監督も注目の映画「プリズン・サークル」が訴えるもの

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島沢優子AERA
2009年12月、島根あさひ社会復帰促進センター初の訪問で受刑者たちに語りかける坂上監督。TCでもサークルになり、互いの顔を見て話す。「プリズン・サークル」は1月25日から全国で順次公開される (c)Rod Mullen

2009年12月、島根あさひ社会復帰促進センター初の訪問で受刑者たちに語りかける坂上監督。TCでもサークルになり、互いの顔を見て話す。「プリズン・サークル」は1月25日から全国で順次公開される (c)Rod Mullen

ドキュメンタリー映画監督 坂上香さん(54)/1965年、大阪市生まれ。一橋大学客員准教授。「暴力の後をいかに生きるか」をテーマに作品を作り続けている(写真:坂上さん提供)

ドキュメンタリー映画監督 坂上香さん(54)/1965年、大阪市生まれ。一橋大学客員准教授。「暴力の後をいかに生きるか」をテーマに作品を作り続けている(写真:坂上さん提供)

 島根の受刑者が対話を通して怒りや悲しみを解きほぐす姿を捉えた映画が完成した。「島根あさひ社会復帰促進センター」が国内の刑務所で唯一採用しているTC(回復共同体)というプログラムには、再犯を防ぐだけでなく、閉塞した社会を変えていく鍵があるという。

【写真】ドキュメンタリー映画監督 坂上香さん

*  *  *
 服役は隔離でも懲罰でもない。それは、受刑者と社会の関係を修復すると同時に、彼らが失っていた感情を取り戻す為に用意された時間である。だからこそ、この作品は刑務所のドキュメンタリーではなく、人間の可能性についての考察になり得ているのだと思う──。

 1月25日から公開される坂上香監督(54)の映画「プリズン・サークル(PRISON CIRCLE)」に、是枝裕和監督が寄せたコメントだ。テレビドキュメンタリーの制作を手がけてきた是枝監督の言う「人間の可能性」とは、人は生き直せる、ということだろう。では、彼らはどうやって生き直すのか。

 舞台である「島根あさひ社会復帰促進センター」は官民協働の新タイプの刑務所だ。警備や職業訓練などを民間が担い、所内の監視は公務員である刑務官らが行う。特筆すべきは、受刑者同士の対話をベースに成育歴をたどるなどして犯罪の起因を探ること。「TC(回復共同体)」というプログラムで更生を促す国内唯一の刑務所なのだ。

 なぜ自分はここに来てしまったのか? どう償うのか? 犯した罪のみならず、「自分自身」と向き合う。幼いころに経験した貧困、虐待、いじめや差別などの記憶や、悲しみ、恥辱や怒りといったどろどろの感情を輪になって吐き出し、対話をする。支援員や他の受刑者に支えられながら解きほぐしていくのだ。

 TC出身者は2009年の導入以来350人を超す。プログラムを通して被害者とその家族の苦しみの大きさを理解する。彼らの再入所率はプログラムを受けていない受刑者に比べると半分以下だ。再犯防止の効果はすでに証明されており、欧米では1960年代から広まっている。対する日本でTCを受けられるのは島根あさひだけ。今現在、全国の受刑者4万人中わずか40人にとどまる。


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