数学の問題に観光客の消費を取り上げるなど社会的な視点を取り入れたり、問題文に会話を引用するなど適性検査との類似点が見られた。

 一方で早稲田進学会の大島茂塾長によると、逆に適性検査Iの共同作成問題が今年は大きく変わり、共通テストのモデル問題に似てきたという。二つの文章が掲載され、読解2問と400字程度の作文が出題されたのは従来通りだが、作文の課題が従来の「あなたの考え」ではなく、問題文中の人物の考えを述べさせる内容に変わった。

「文部科学省は国語教育で読解力重視に傾斜しており、共通テストもその方針で作問されています。今年の都立一貫校の共同作成問題は、共通テストに寄せて作ったように感じられました。読解力はもちろん必要ですが、生徒の個性がにじみ出て、真の思考力や論理構成力を問う『あなたの考え』がなくなったのはさみしいですね」(大島塾長)

 宝仙学園中高共学部理数インターの富士晴英校長は「大学入試センターや共通テストは廃止して、大学が独自に入試を行った方がいい」と提言。また、「教育自体が変わっていく中で、入試のあり方も変わるべき。入試改革は大学よりも中学の方が進んでいる」と話す。一方で急増する適性検査型の入試を「生徒集めのために利用している」と批判する声もある。

 入試は学校のメッセージ。多様な入試が登場し、多くの受験生にチャンスが広がるのは歓迎するが、どのような生徒を欲して、入学後にその個性をいかに伸ばしていくのか。入試を通して、学校のあり方が問われている。(ライター・柿崎明子)

AERA 2020年1月27日号より抜粋

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