福岡伸一が「ここまでの予言者はいない」と考える物理学者の“頭脳” (2/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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福岡伸一が「ここまでの予言者はいない」と考える物理学者の“頭脳”

連載「福岡伸一の新・生命探検」

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福岡伸一(ふくおか・しんいち)/生物学者。青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授 (c)朝日新聞社

福岡伸一(ふくおか・しんいち)/生物学者。青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授 (c)朝日新聞社

 遺伝子はその情報を次の世代に正確に伝達する役割を担う。そのためにもっとも必要とされることは、自分自身を鋳型にして同じものを作り出すこと、つまりコピーする能力を有していなければならない。

 では、自然界においてある特定のパターンが存在し、それと同じものがコピーされるような自己複製的な現象はあるだろうか。

 ある。結晶の成長だ。

 一般の結晶は、たとえば単斜晶系、三斜晶系、直方晶系、六方晶系など決まったパターンに分類でき、結晶はそれぞれ固有のパターンをコピーしながら成長できる。つまり自己複製することができる。これと同じように、遺伝子もまた、単なる結晶ほどはシンプルでないにせよ、各部分のパターンがそのままコピーしうるような、結晶的な構造を持っているはずだ、という推測が成立する。

 ゆえに、シュレーディンガーは、遺伝子は非周期的な結晶だ、と予言した。この予言はまさに的中した。現在の科学において、たとえば脳の仕組みやAIの未来といった大きな問いに対して、ここまで壮大なビッグピクチャーを描ける予言者などまずいない。(文/福岡伸一)

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福岡伸一

福岡伸一(ふくおか・しんいち)/生物学者。青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授。1959年東京都生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部研究員、京都大学助教授を経て現職。著書『生物と無生物のあいだ』はサントリー学芸賞を受賞。『動的平衡』『ナチュラリスト―生命を愛でる人―』『フェルメール 隠された次元』、訳書『ドリトル先生航海記』ほか。

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