女性は大学生の当時の就活をこう振り返る。

「大変で、つらい思いをすることも多かったのですが、みんながそうでした。厳しい時代だったのだと思います」

 現在の30代半ばから40代半ばにかけては、バブル経済崩壊後の厳しい不況期に新卒採用を迎えた就職氷河期世代だ。失われた世代、ロストジェネレーションとも言われる。総務省の調査によると、非正規で働く35~44歳は、18年現在で371万人いる。25~34歳の非正規より100万人以上多い。

 たまたまその世代に生まれただけで、機会を奪われ、著しく不利益を被っていいのか──。ロスジェネ世代に再チャレンジの機会を与えようという機運が広がっている。

●正規雇用を30万人増やす、民間企業にも働きかけ

 政府は19年6月、経済財政諮問会議で「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案を公表した。その目玉が、ロスジェネ世代への支援プログラムだった。数値目標を掲げており、今後3年間で正規雇用者を30万人増やすことが目標とされている。

 施策は「相談、教育訓練から就職まで切れ目のない支援」と「個々人の状況に合わせた、より丁寧な寄り添い支援」の2本柱。20年度の概算要求では1344億円を計上した。ただ、第1次安倍政権でも「再チャレンジ支援」を掲げ、看板倒れとなった経緯もある。

 政府の方針を受け、まず始まったのが、この世代を対象にした公務員の採用だ。宝塚市のほかにも、兵庫県や愛知県、和歌山県、兵庫県三田市、千葉県鎌ケ谷市、滋賀県甲良町といった自治体が採用に乗り出した。11月には国家公務員でも取り組むことが発表され、採用人数などの詳細を詰めている。

 ただ、公務員だけでは数は限られている。実態としては民間の採用に多くを頼ることになるだろう。

 まず、採用に動く企業は人手不足の業界が中心になりそうだ。いち早く手を挙げたのが総合物流の山九(本社・東京都)だ。

次のページ