これまで、ジャニーズ事務所はインターネットとは一定の距離を置き続けてきた。昨年にはSixTONESが「YouTube アーティストプロモ」キャンペーンに抜擢され、今年5月には山下智久(34)がインスタグラムを開設するなど、所属タレントの一部に動きはあった。だが、ここまで大きく舵を切ったケースは今回の嵐が初めてだ。

 メンバーの松本潤(36)は21年目のテーマを「リボーン」と語り、デジタル解禁の理由の一つに「ファンが寂しい思いをしないこと」を挙げている。

 国民的アイドルグループとして絶大な存在感を持つ嵐の参入が、音楽市場に与える影響は計り知れない。音楽ジャーナリストの柴那典さんは、嵐がサブスクリプションを解禁することのアドバンテージをこう語る。

「聴かれた回数がヒットの定義になるサブスク市場では、嵐のように多くのヒット曲を持っているアーティストほど、利益を得ることができます」

 日本レコード協会は、2018年の音楽配信売り上げで、ストリーミングが349億円と、ダウンロードの256億円を上回ったと公表。ストリーミングへの期待は高まっている。

 気軽に視聴できるサブスク市場では、幅広いファンを持つことも有利に働く。近年ではCDプレーヤーを持たず、そもそも音楽へのアクセスの仕方がわからないという若い世代も増加した。裏を返せば、デジタル配信がなかったことはディスアドバンテージだった。

「制約のなかでこれだけの人気を得てきたのですから、一大ムーブメントを起こすかもしれません」(柴さん)

 現にApple Musicの上位30曲に嵐の楽曲13曲がランクインしている(11月5日現在)。

 ジャニーズ事務所にとっても、大きな転換点になる。(文中一部敬称略)(編集部・福井しほ)

AERA 2019年11月18日号より抜粋

著者プロフィールを見る
福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

福井しほの記事一覧はこちら