脳と体内時計にとって最適な24時間(AERA 2019年11月11日号より)
脳と体内時計にとって最適な24時間(AERA 2019年11月11日号より)

 仕事の効率は脳の特性に合わせて24時間を過ごすことで変わってくる。脳の覚醒度がピークになる起床から3~4時間に、重要な知的作業を行いたい。AERA 2019年11月11日号に掲載された記事を紹介する。

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 人間が持つ体内時計の周期は平均24時間10分だと言われるが、個人差がある。この周期が長い人が、いわゆる「夜型」と言われる人々だ。

「朝型、夜型は遺伝的なものが大きいので、最適な起床・就寝時間も人によって異なります。ただし、体内時計は光の影響を強く受ける。基本的には朝起きて夜寝たほうが、生活のリズムを整えやすいでしょう」(脳神経科学者、枝川義邦・早稲田大学教授)

 起床時間にかかわらず、起きてから寝るまでの基本的な過ごし方は多くの人に当てはまる。

 よく知られることだが、起床したらまずはカーテンを開け、太陽の光を浴びたい。睡眠の導入と維持に関係するホルモン・メラトニンは、光を浴びると分泌が止まる。逆に、カーテンを閉めた薄暗い部屋にいると分泌が止まらず、すっきりしない状態が続く。さらに、メラトニンは分泌が止まってから14~16時間後に再び分泌され始める。つまり、朝しっかりと光を浴びれば、しかるべき時間に自然と眠くなるのだ。外に出るのがベストだが、カーテンを開けて窓際で伸びをするだけでもいい。曇りや雨の日でも効果は得られるという。

 十分な睡眠がとれていれば、朝は脳のゴミがすっきり処理された状態にある。脳内での情報処理・意思決定を担うリソースは、目覚めた直後がピークだ。

「意思決定する際は主に前頭前野が働きます。前頭前野は意思決定を繰り返すほど疲れていきます」(同)

 人は、意識せずとも生活の中で無数の意思決定をしている。すぐにベッドから出るか、あと10分布団の中で過ごすか。トイレに行くか、まず顔を洗うか。つまり目覚めた瞬間から、その日使える資源を少しずつ消費し続けていくのだ。

 頭がすっきりしている一方で、脳の覚醒度はサーカセミディアンリズム(12時間単位の体内時計)に影響されるため、目覚めた直後は覚醒度が低く眠たいと感じる。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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