「脳の覚醒は起きて3~4時間でピークを迎えます。7時に起きている人は10~11時ごろが覚醒のピーク。前頭前野もまだ疲れていないはずなので、最も仕事のパフォーマンスが上がりやすい。反対に、もしこの時間帯に眠くなる場合は、睡眠不足が疑われます」(同)

 IT企業の総務で働く女性(30)は自分の仕事ぶりについて、「我ながら効率が悪いと思う」と嘆く。

 目覚ましをかけるのは毎朝6時。寝起きが悪いので、ベッドの中でそのまま30分ほど過ごす。9時に出社してから30分ほどかけて経済新聞を読み、9時30分の始業後はメールのチェックや返信に1時間程度。コーヒーをいれてネットニュースを流し読みし、11時過ぎからプレゼン用の資料作りに取り掛かる。資料作りにエンジンがかかってきたところで昼休みに入るため、午前中はまったくはかどらず、定時の17時30分に仕事が終わることはほぼない。枝川教授はこうアドバイスする。

「起床後3~4時間を、メールチェックやネットサーフィンに費やすのはもったいない。多数の情報を処理するのに向いていますし、適切な価値判断もしやすい。この時間は重要な知的作業に向いています」

 仕事は(1)重要で緊急のもの(2)それほど重要ではないが緊急のもの(3)重要だが緊急ではないも(4)重要でも緊急でもないもの、に分けることができる。まず(1)をやるとして、(2)と(3)のどちらを優先するのかは難しいが、脳の働きを考えると、起床後3~4時間以内に(3)に取り掛かりたい。

(編集部・川口穣、ライター・谷わこ)

AERA 2019年11月11日号

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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