一方で、たくさんの人が手を差し伸べてくれた。水につかったストーブは灯油販売店を営む知人が持ち帰り、分解清掃してくれている。洗浄剤や消毒液、大量の雑巾を持って駆けつけてくれた人がいた。掃除を手伝ってくれた人、差し入れを持ってきてくれた人、私たちが作業している間、0歳の息子を見ていてくれた人もいる。災害で大切なのは「自助」「共助」「公助」と言われるが、特に共助の大切さ、ありがたさが身に染みた。

 ようやくリビングの清掃が終わった。廊下、キッチン、風呂、倉庫と先は長い。いまは勢いで捨てられているが、やがて喪失感に襲われるかもしれない。それでも、一歩一歩日常を取り戻していこうと思う。(編集部・川口穣)

AERA 2019年10月28日号

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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