成功例として紹介してくれたのは、米国の名門私立、ノースウェスタン大学の基金の例だ。

 同大学の基金は、1991年時点で9億5600万ドル。そこから52億1500万ドルの寄付を集め、有価証券による運用で82億4500万ドル増やした。教育研究投資や学生支援に45億4900万ドル使い、15年当時の残高は98億6700万ドル。四半世紀で基金残高を10倍に増やしながら、教育研究投資や学生支援を行うことができたことになる。

「寄付を集め、資産運用で利益を上げ、戦略的に活用する。その三位一体で、教育研究の競争力が向上すると考えられます」

 資産運用への意識の高まりは、まだ一部の大学の話かもしれない。ただ、大学側の意識は「確実に変わりつつある」と感じる片山さん。

「教育研究は不確実性の上に成り立っている。ノーベル賞級の教授を高い給料で引っ張ってくるのも学生に奨学金を給付するのも投資です。大学の事業のいたるところにリスクがあるという考えが浸透すれば、収入源を確保するための資産運用ももっと広がるはずだ」と言う。

AERA 2019年10月21日号