試合後のインタビューでは、選手たちからは被災者への思いが聞かれた。

「ジェイミーからその話を聞いて、私たちだけのための試合でない、苦しんでいる人たちのためのものであると思った」

 と語ったのは、リーチだ。台風通過から24時間経たずに試合開催が実現したことについても、

「床をきれいに拭いてくれたり、(水たまりを)スポンジで吸い取ってくれたりした。試合ができたことを感謝している」

 と言葉をかみしめた。この日2トライを挙げ、この試合のMVPにも選ばれたウィングの福岡堅樹は囲み取材でこう振り返った。

「日本の力になれるようなプレーができたら、と全員思っていました」

 代表入りして7年目で初トライを挙げたプロップ(PR)の稲垣啓太も、

「台風で被災した方々に、ラグビーで元気を取り戻していただきたい。そういう気持ちを持って試合に取り組みました」

 日本を思い、日本のためにつかみとった勝利だ。3大会連続出場のスクラムハーフ(SH)田中史朗はこう評する。

「日本ラグビーにとっても将来の子どもたちにとっても目標というものが1ランク上がりましたし、ファンのみなさんも増えると思うので、もっともっと日本のラグビーのレベルが上がってくるんじゃないかと思います」

「ティア1」と呼ばれる強豪国10以外のチームが1次リーグを全勝するのは、今回の日本が初めて。そのティア1を2つ破り、次なる対戦相手は、日本が4年前に「史上最大の番狂わせ」と評された大金星を奪った南アフリカだ。今年9月に対戦した際には、7対41の大差で敗れたが、田中は「ジャパンの戦い方ではすごいいい場面があったけど最後取り切れてなかっただけの話なので、それを取り切れるように練習でディティールをこだわっていく」

 8強を目標に掲げてきたが、桜の戦士たちは決して8強で満足していない。次も自分たちの勝利を本気で信じて臨む。(編集部・深澤友紀)

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