後半2分、福岡堅樹が相手からボールを奪い取り、そのまま独走してトライを決めた(撮影/写真部・東川哲也)
後半2分、福岡堅樹が相手からボールを奪い取り、そのまま独走してトライを決めた(撮影/写真部・東川哲也)
松島幸太朗はスコットランド戦でも激走した(撮影/写真部・東川哲也)
松島幸太朗はスコットランド戦でも激走した(撮影/写真部・東川哲也)

 死闘と呼ぶにふさわしい「25分間」だった。

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 後半15分、世界でも屈指のスコットランドのスクラムハーフ(SH)、グレイグ・レイドローがトライ後のコンバージョンキックを決めて28対21。一時21点あった日本のリードは1トライ1ゴール差まで詰め寄られた。

 直後、日本は連続攻撃で反撃に出る。日本は、「ブレイブブロッサムズ(勇敢な戦士)」の名にふさわしく、相手からタックルを受けても、前に倒れ、陣地獲得を繰り返す。少しでも前進するたびに、赤色に染まったスタジアムから歓声が上がり、選手たちを後押しした。だが、連続攻撃(フェーズ)が20を超えたところで相手選手のジャッカルがノットリリースザボールの反則を誘い、相手ボールに。繰り返される激しいぶつかり合いに、主将のリーチマイケルが顔をしかめて左肩を押さえる姿もあった。

 後半26分すぎには、またも自陣に攻め込まれてピンチに。だが、ナンバー8姫野和樹が得意のジャッカルで逆に相手の反則を誘い日本のマイボールになると、熱くなった両チームが激しくもみ合った。最後10分間のテリトリーは、日本が27%でスコットランドが73%。いつ失点してもおかしくない展開だったが、トライまであと数メートルのピンチにも日本はダブルタックル、トリプルタックルで守り切った。

 日本の司令塔、スタンドオフ(SO)田村優は勝因を聞かれて、こう答えた。

「気持ちじゃないですか。もちろん日本代表はスキルも高かったけど、タックルもばちばち入るし、相手よりもがんばって動こうとした結果が出た試合だったと思います」

 日本がなんとしても勝利を勝ち取りたかった理由がある。ジェイミー・ジョセフ監督は試合後の会見で、決戦の朝、選手たちにこんな話をしたと明かした。

「今朝起きて、台風で甚大な被害が出て、19人の人が亡くなり、12人が未だに行方不明だと聞きました。チームにもこの話をしました。今日の試合のタフな時間帯を見ていて、そのことを思いました」

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「床を拭いてくれたりスポンジで吸い取ってくれたり…」