調布駅で各停に乗り換えて飛田給駅へ。乗り降りのたびに駅員がホームでスロープを持って待っていてくれた。車いす利用の場合は駅員の手を煩わせるという申し訳なさがあるが、快い対応に救われる思いがする。

 飛田給駅に到着。ホームの駅名標や出口の案内は、日本語、英語のほか中国語、韓国語の表記もあった。ただ、駅構内には日英2カ国語表記の案内板もあり、まちまちな印象だ。駅から東京スタジアムへ続く歩道は広く、ストレスなく進める。東京スタジアム前の歩道橋は向かって右側にしかエレベーターがなく、左側を来た場合は歩道橋下の横断歩道で右側にわたる必要がある。歩道橋に車いすやエレベーターのマークがあるが、肝心の矢印が消えかかっていて、せっかくの丁寧な表示が台無し。

 ようやく東京スタジアムに到着! 羽田空港からここまで2時間15分だった。一緒にスタートした健常者との差は30分。もし京王線で各停に乗っていたらその差は1時間近かっただろう。

「2時間を超すと、ちょっとした小旅行ですね」

 と話す上原さんに、バリアフリーについて尋ねると、

「街中のバリアフリーは当事者のリアルな声を聞かずに作られたものが多く、僕は『ファンタジーデザイン』と呼んでいます」

 確かに券売機や、モノレールの降車改札などもそうだった。また、公共の体育施設を借りる際にも壁があるという。上原さんが18年の平昌パラリンピック開幕前に、長野のリンクで最終調整しようとしたら断られた。車いすスポーツ体験会を企画したときに、国立の体育館に使用を一度断られたこともある。

「過去に(長野など)パラリンピックを開催し、東京パラリンピックが近づいている日本でも、こうした現状があります。僕は自分がこれまで嫌だと思ったことを、今の子どもたちに残したくないです」

(編集部・深澤友紀、ライター・川村章子)

AERA 2019年9月30日号より抜粋