北村紗衣(きたむら・さえ)/1983年、北海道士別市生まれ。専門はシェイクスピア、フェミニスト批評。東京大学大学院修士課程修了後、キングズ・カレッジ・ロンドンで博士号取得。現在、武蔵大学准教授(撮影/写真部・片山菜緒子)
北村紗衣(きたむら・さえ)/1983年、北海道士別市生まれ。専門はシェイクスピア、フェミニスト批評。東京大学大学院修士課程修了後、キングズ・カレッジ・ロンドンで博士号取得。現在、武蔵大学准教授(撮影/写真部・片山菜緒子)
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 批評家・北村紗衣さんによる『お砂糖とスパイスと爆発的な何か 不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門』は、フェミニストの視点で数々の作品を読み解くことで、楽しみ方の幅を広げてくれる一冊だ。著者の北村さんに、同著に込めた思いを聞いた。

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 この原稿を書いている最中、本書の著者・北村紗衣さんが「さえぼー」さんとして「マツコの知らない世界」に出演した。番組内でもウィキペディアに関する旺盛な活動が紹介されていたが、北村さんの観劇や読書量も膨大だ。

<一年に百本くらい映画を映画館で見て、かつ百本くらい舞台も劇場で見ます。その全部について簡単な批評を書いて自分のブログにアップ>。さらに年間260冊くらい本を読むのだそう。

 本書ではシェイクスピア、クリスティから「ファイト・クラブ」「アナと雪の女王」などの映画、そしてセクシーなショー「バーレスク」の考察まで、意外な視点を北村さんが教えてくれる。

「私の場合、見るのも読むのも仕事の一部ではありますが、それにしても多いですよね。これだけの数を見続けられるのは、とにかく楽しいから。楽しむための方法が、私にとっては批評、とくに『フェミニスト批評』を用いた批評なのです」

 北村さんの言う「楽しむ」とは、映画や演劇を見て、ただ「面白かった」と思うことだけではない。

「そもそも批評とは何かについては、いろいろと議論があります。私は不真面目な批評家なので、批評を読んでくれた人が、読む前よりも対象となる作品や作者について興味を持ち、楽しんでくれたら、それが一番大事な仕事だと思っています」

 批評の効能は他にもある。もしも「つまらない」と思う作品に出合った時でも、作品のポイントを探すことで興味深く考えられるようになる。批評的な見方は楽しみ方の幅をひろげてくれるのだ。

「私たちは普通に生きているだけで、いつの間にか偏見を身につけ、檻の中に入ったような状態になっています。私の場合、檻から出してくれたのが、文学とフェミニズムでした」

 本書には「自分の欲望を知ろう」「男らしさについて考えてみよう」「ヒロインたちと出会おう」「わたしたちの歴史を知ろう」「ユートピアとディストピアについて考えよう」という五つの章に、25本のエッセーと5本のコラムが載っている。読んでいるうちに、批評の作法が見えてくるような書き方だ。

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