「この本は高校生に読んでもらえたらと思って、書き方も普段よりはどぎつくないように意識しました。高校生だと実際の舞台を見るのは難しいかもしれませんが、世の中にはいろいろと面白いものがあることを伝えたいんです」

(ライター・矢内裕子)

■リブロの野上由人さんのオススメの一冊

『君が異端だった頃』は、文壇の貴公子・島田雅彦による自伝的青春小説だ。リブロの野上由人さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

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 現在は芥川賞の選考委員、今年58歳になった「文壇の貴公子」の自伝小説。大江健三郎が「四国の森」、中上健次が「紀州の路地」なら、島田雅彦は「郊外」の作家。行政区でいえば川崎市だ。

 中学校までを「縄文時代」、大学進学までを「南北戦争」、大学在学中に小説家デビューし芥川賞候補3回のあと初の長編『天国が降ってくる』までを「東西冷戦」、さらに3回芥川賞候補になりながら最多落選記録(6回)を樹立した昭和末期を経て中上健次が亡くなる1992年の『彼岸先生』脱稿までを「文豪列伝」として4部にまとめた。

 後半は埴谷雄高、大岡昇平、安部公房、大江健三郎、中上健次ら先輩作家との交流の記録が続き、文壇史的にも貴重。

 これを自伝の第1期とするなら、次は95年『忘れられた帝国』あたりから始まるであろう第2期にも期待が高まる。

AERA 2019年9月30日号