Nicholas Hoult/1989年、イギリス生まれ。子役時代「アバウト・ア・ボーイ」でヒュー・グラントと共演し注目を浴びて以来、「X-MEN」シリーズ、「女王陛下のお気に入り」など、幅広いジャンルで活躍。端正なルックスだけでなく、確かな演技力に定評がある(写真:gettyimages)
Nicholas Hoult/1989年、イギリス生まれ。子役時代「アバウト・ア・ボーイ」でヒュー・グラントと共演し注目を浴びて以来、「X-MEN」シリーズ、「女王陛下のお気に入り」など、幅広いジャンルで活躍。端正なルックスだけでなく、確かな演技力に定評がある(写真:gettyimages)
「トールキン 旅のはじまり」/J・R・R・トールキンの激動の半生を描く。全国公開中 (c)2019 Twentieth Century Fox
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「いまを生きる」発売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン、価格1429円+税/DVD発売中 (c)2019 Touchstone Pictures.
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 AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。

【写真】ニコラス・ホルトが主演を務めた映画「トールキン 旅のはじまり」

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「ホビットの冒険」「指輪物語」は世界中で愛される、言わずと知れた不朽の名作。半世紀以上経った今もなお、大衆文化に多大な影響を与え続ける。ところがそんな偉大な作家J・R・R・トールキンの人物像とその生い立ちについては、意外と知られていない。

「トールキン 旅のはじまり」は、若き日のトールキンに焦点を当て、あの壮大な世界観の原点に迫る伝記映画である。主演は、メガホンをとったドメ・カルコスキ監督に彼以外考えられなかったと言わしめたニコラス・ホルト。

 トールキン文学との出合いについては、「12歳の時『アバウト・ア・ボーイ』の監督に『ホビットの冒険』の本をもらったのが、彼の作品に親しむようになるきっかけでした」と振り返る。更に本作のために調べていく中で何よりも感銘を受けたのは、彼の言語に対する情熱だったと言う。

「言語を創る時、それを話すキャラクター、人物が必要になる。そしてその起源となる歴史、土壌も、というふうに、神話全体を創っていかなければならないものです。彼は北欧神話、ギリシャ神話にもインスパイアされていたわけですが、イギリスにはそういった固有の神話が存在しないと感じていました。だからこそ、自らそれを創ったんです」

 幼くして父を亡くし、12歳で母も他界。孤児として生きる学生時代、運命の女性との出会い、第1次世界大戦での過酷な体験など、激動の半生が、あの壮大な冒険物語を彷彿とさせる幻想的な映像を随所に用いて劇的に描かれる。

 中でも同級生たちとの固い絆は、彼の作品の大きなテーマの一つである、どんなことがあっても決して仲間を裏切らない熱い友情と重なる。

「あらゆる意味ではみ出し者でしたが、そんな彼が受け入れられるようになり、やがて仲間、恋人と出会うもそれらを奪われる。それがいかに彼に影響を与えたのか、何を意味するのかということこそが、本作の物語です」

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