日本の役割が大きいのは、国連軍後方基地が日本にあることが大きく影響しているが、そもそも在韓米軍が陸軍主体の独立軍だという点が大きく影響している。特に海軍は司令部機能しかないため、こうした国際的な活動には十分適応できないのが現状だ。結果として、在韓米軍を「buddy(バディー=相棒)」とする韓国は、国際的な安全保障の流れに大きく後れを取っている。

 典型が、日米が音頭を取る「自由で開かれたインド太平洋構想」だ。韓国軍は北朝鮮の瀬取り監視活動にこそ参加しているが、日米のように常時、艦船や航空機を派遣していない。米国が中国の南シナ海での活動を牽制(けんせい)する「航行の自由作戦」にも参加していない。

 日本が英仏などとGSOMIAを結ぶなかで、韓国は逆の動きをする。朝鮮半島に冷戦構造が残り、「北朝鮮に影響力が強い中国と衝突できない」という韓国独自の事情が働いたともいえるが、「韓国が地域の同盟国として十分な役割を果たしていない」という不満は米側に高まっている。

 米国はシュライバー国防次官補が8月28日の講演で、韓国を厳しく批判。事態はますます深刻化の様相を深めている。

 GSOMIA破棄によって当面困るのは韓国だが、米韓同盟が崩壊すれば、その尻ぬぐいをさせられるのは、思いやり予算の増加や度重なる艦船派遣などで、安全保障の肩代わりをさせられる日本だという現実を、私たちは忘れてはならない。(朝日新聞編集委員・牧野愛博)

AERA 2019年9月9日号