そして日韓GSOMIA破棄によって生じる問題が、日米韓防衛協力の弱体化と韓国の孤立という問題だ。

 韓国政府は日韓GSOMIA破棄の後も、米韓同盟の強化に尽くすとしているが、米側は「文在寅政権は思い違いをしている」(国務省声明)などと強く反発している。それは、弾道ミサイル防衛を基軸とした米国の東アジア安保政策に重大な影響を与えるからだ。

 米国の弾道ミサイル防衛は、独自に保有する早期警戒衛星のほか、英国とグリーンランド、米アラスカに設置した早期警戒システム、イージス艦などのほか、日本や韓国などに設置したXバンドレーダー、日韓など同盟国が保有するイージス艦などから構成されている。米軍は更に、高高度迎撃ミサイルシステムの一部を日韓に配備することなどで、ハワイにある米インド太平洋軍司令部の「Air missile defense system」に、日韓を取り込もうとしている。

 今回の破棄は、韓国がこの流れに異を唱える動きに他ならない。韓国は8月発表した中期国防計画などで、独自のミサイル防衛網を構築すると主張しているが、韓国軍の元将校は「少しでも弾道ミサイル防衛の知識のある人間なら、誰もそんな主張は信じない」と語る。

 また、朝鮮半島有事の際、国連軍後方司令部がある日本は、重要な兵站(へいたん)基地になる。日本は有事法制の制定などにより、朝鮮半島に赴く米軍に対する補給や救難、傷病者の収容などで大きな役割を果たす。逆に、韓国軍は有事の際に米軍がどのように増援するのか、詳細を把握していない。食糧や弾薬、装備の補給をどのくらい維持できるのかを知らないのだ。韓国軍の助けとなる米増援軍にとって自衛隊がどのくらい重要な存在なのか、少なくとも文政権の幹部たちは理解していない。

 一方、18年から日米英豪仏などは東シナ海を中心に、国連安全保障理事会の制裁決議違反の疑いがある、北朝鮮船舶などの不法な積み替え(瀬取り)活動を監視している。韓国軍も参加しているが、日韓以外の関係国は、船舶が佐世保、航空機が嘉手納にある各米軍基地を主に使用している。

次のページ