数々のヒット曲を世に送り出し、現在もアフリカでの社会貢献活動を続けているMISIAさんがAERAに登場。その活動にかける想いを語った。
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色鮮やかな花々の前に立ち、MISIA(41)は射るようなまなざしをレンズに向けた。話し始めると、初対面の壁を感じさせない、穏やかで優しい口調。
「いっぱいしゃべってしまっていますね」
どんな質問にも真摯に向き合い、豊かな感性を言葉にのせる。歌手として人々の心揺さぶる音楽を生み出しながら、アフリカで社会貢献活動を行うようになって10年以上が経つ。
初めてケニアを訪れたとき、スラム街としてはアフリカ最大級のキベラスラムを訪問した。目の前には、家々が所狭しと立ち並んでいた。4畳ほどのスペースに家族5人が暮らすような、とても小さな家だ。
でも、心を捉えて離さなかったのは、そんな光景とともにある圧倒的な“素晴らしさ”だった。
「アフリカの子どもたちの笑顔だったり、サバンナで見た星空だったり、寝ているときにテントのなかで聞いたライオンの声だったり。それに雨水をためて濾過した水でつくったカレー、そして音楽ですね」
一方で、同じ現実として、貧しさゆえに肥溜めのなかに捨てられてしまう子どももいた。素晴らしいものを知ったからこそ、「どうしてだろう、という悲しみがすごく強くて」。
おもに子どもたちの教育支援をしながら、目に焼きつけたありのままのアフリカの姿を伝えている。
「どんな場所にだって、素晴らしいものがあれば、抱えている問題もある。どちらかしか語らないというのはうそだし、本当じゃないと思うんです」
アフリカを訪れるようになって、音楽との向き合い方も変わった。
「アフリカで聴いた歌は、『昨日こんなことがあってね』『お隣さんはこうでね』と、日常生活と密接に関わっていた。歌って、原点はリアルなんだよな。そう改めて感じるようになりました」
(ライター・古谷ゆう子)
※AERA 2019年8月5日号