勤務していた京華商業高校を相手取り提訴した男性教員。「一方的な雇い止めは業界全体の問題。誰かが動かないといけないと思う」(撮影/編集部・野村昌二)
勤務していた京華商業高校を相手取り提訴した男性教員。「一方的な雇い止めは業界全体の問題。誰かが動かないといけないと思う」(撮影/編集部・野村昌二)
一方的な雇い止めは不当だとして今年1月、朝の登校指導の時間に抗議のストライキを実施した30代の男性教員たち(写真:私学教員ユニオン提供)
一方的な雇い止めは不当だとして今年1月、朝の登校指導の時間に抗議のストライキを実施した30代の男性教員たち(写真:私学教員ユニオン提供)

 私立高校の非正規教員が悲鳴をあげている。一方的な雇い止め通告などの現場の理不尽さから、労働組合へ駆け込む人も少なくないという。教員の「使い捨て」を前提にしている体質は、今後改善するのだろうか。

【写真】ストライキを実施した30代の男性教員たち

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「来年度の採用はないと思ってくれ」

 昨年9月5日の放課後、東京都文京区の私立京華(けいか)商業高校に勤務していた30代の男性教員は校長室に呼ばれると、校長から思ってもいなかったことを告げられた。今年3月いっぱいでの「雇い止め」を通告されたのだ。

「目の前が真っ白になり、一瞬何も考えられなくなりました」

 と男性は振り返る。憧れの教員になって3年目だった。

 120年以上の歴史を持つこの学校は、男性によると、正規雇用の教員を「専任」、非正規雇用で年度ごとに契約更新するが、担任や部活などを任され、専任と同様の職務を担う教員を「有期専任」、非正規雇用で年度ごとに契約更新し、担任や部活などは任されない教員を「常勤」、授業のコマ数で働く教員を「非常勤」と呼んでいるという。

 男性は「有期専任」。会社員生活を経て教員になろうと決めた時、正規雇用での募集は見つからなかった。

 男性が見た同校の募集要項には、「2年目に専任採用の判断をし、4年目からは専任教諭として採用される道が開かれている」と記載されていたという。採用されると、専任を目指した。

 2年目から学級担任を持ちバレーボール部とダンス部の顧問も兼ね、専任以上にやってきたという自負があった。男性が着任した際、同校には2人の有期専任がいたが2人ともその後、専任になれた。男性も当然、4年目から専任になれると信じていた。

 それが具体的な説明のないまま「雇い止め」を通告されたのだ、と男性。

「どうしてですか。私は学校に何か害になるようなことをしましたか」

 男性が問うと校長は、

「総合的に判断した結果。何が悪いとは言えない」

 としか答えなかったという。男性は言う。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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