井上さんはこの「〇〇じゃね?」について、新たな説を示してくれた。北関東の台頭だ。

 栃木、茨城などの「北関東」は、アクセントの決まりが存在しないいわゆる「無アクセント地帯」の一つだという。そこから「ちがかった」「~みたく」などの表現と共に全国に一気に広まったのが、「雨じゃね?」「おかしくね?」という平板な言い方だ。

「今、北関東は若い人にとって『かっこいい』らしいんです。たとえば茨城のヤンキーがズボンを下ろして穿く行為は、『大人たちの社会には入っていない=かっこいい』ことを示す作用があると、社会学では説明されます。似たことが言葉の世界でも起きていて、平板な物言いは、ヤンキーのズボン下ろしなどの行為にあたるわけです」(井上さん)

 わざと、少し外す。そのほうがかっこいい。そのための平板化。アナウンサーの梶原しげるさん(68)も注目する。

「今は、きちんとし過ぎていること、正し過ぎることはカッコ悪い、という意識がある。折り目正しさが『堅苦しい』と疎まれ、『優等生が煙たがられる現代』を生き抜く知恵として、『ちょっと外す』テクニックが求められているのだと思います。そういう『規範を逸脱する心地よさ』を、平板アクセントで遊ぶ。そんな気風があるのかもしれないですね」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2019年6月24日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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