「ヤフー」に関しては、元々は米ヤフーが保有し、現在は同社を買収した米通信大手ベライゾンが握る「ヤフー」の商標使用料がネックとみられる。

「社名にヤフーを使うと、売り上げの3%をベライゾンに支払う必要が出てくる」

 ヤフー幹部はそう打ち明ける。

ソフトバンク」については、2006年にグループから離脱・独立したSBIホールディングスとの関係が問題だ。金融系のサービスにソフトバンクのブランドを使った場合、銀行、証券などを手がけるSBIと競合する。SBIの北尾吉孝氏とソフトバンクの孫正義氏は今も「定期的に食事に行く仲」とされ、その良好な関係に水を差す可能性があるとみられる。

 ヤフーは27日、持ち株会社ソフトバンクグループ傘下から、国内通信のソフトバンク傘下に移る。「ヤフー」を冠したサービスは縮小に向かい、ソフトバンクとの融合が進みそうだ。一方、PayPayは「メディア事業中心ではいずれ厳しくなるヤフーと、料金値下げや楽天の参入で携帯電話事業が厳しいソフトバンクという、やばい2社が将来を見据えて考えたサービス」(幹部)で、大盤振る舞いのキャンペーンによる損失を補うことが急務だ。

 ヤフーの象徴だった宮坂学・前社長は18日の株主総会後に取締役を退き、社と距離を置く見通しだ。ネット企業らしい変わり身の早さが、吉と出るのか。他の日本企業の試金石にもなりそうだ。(ライター・平土令)

AERA 2019年6月24日号