名作から新作まで 映画から読み解く「父と子」のかたち

2019/06/15 17:00

「僕も3歳の子の父親として積極的に育児に参加しているつもりですし、“イクメン”としてがんばっている男性は多い。しかし、男女の賃金格差が10対7である日本では男性が家計を担うことが多く、父が子に接する時間は母には及ばず、子どもにとっては『お母さんが1番で、お父さんは2番』のまま。さらに妻からは『普段は優しいお父さんでいてほしいけど、叱るときはお父さんからビシッと言って』と求められたりもします」

 こうした問題は日本だけのものではなく、男女平等の先進国と言われる国の映画でも描かれていると田中さんは言う。

「フレンチアルプスで起きたこと」(14年)は、スウェーデン・デンマーク・フランス・ノルウェー合作のブラックなコメディー映画だ。雪崩が起きたときに自分だけ逃げ出してしまった父親が、妻と子にチクチクと責められる。“家族を守る頼もしい父”という役割をまっとうできず苦しむ父親が描かれる。

「男女の経済格差がなくなったとしても、『お父さんには男として頑張ってほしい、強くいてほしい』という要求はなくならないのかと、考えさせられますね」(田中さん)

 一方、父と子の新しい可能性を感じさせる映画として挙げてくれたのが、フランスの「あしたは最高のはじまり」(16年)。オマール・シー演じるプレーボーイが、女性から「あなたの子よ」と赤ん坊を渡され、ゲイの友人に助けられながら、子を育てていく。

「いまは離婚を経たステップファミリーも多く、同性カップルが養子を育てるケースも増えています。血のつながりではなく、子どもを育て、父親を“する”ことによって男は父になるのだということを描いた、示唆的な映画です」

(フリーランス記者・中村千晶)

AERA 2019年6月17日号より抜粋

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